こんにちは、”くるまる”です。
その昔、私は交通事故鑑定人なるものをしていた事があります。
大きな事故などのテレビ報道でちょくちょく露出する「交通事故鑑定人」ですが、一体どのような職業なのでしょうか?
そこで今回は交通事故鑑定人の選び方というか、少なくとも「こんなヤツに絶対頼むな!」という内容です。
目次
交通事故鑑定人とは?
交通事故鑑定人(こうつうじこかんていにん)とは、第三者から依頼を受け、交通事故の原因究明や解明されていない対象事故の一定部分に対して、自身のキャリアや学識経験に基づいて専門的意見を述べる人物を総称して交通事故鑑定人と呼ばれている。
特に資格も届出も必要ありません。
あなたも名乗れば「交通事故鑑定人」になれます(笑)。
自称でOKです。
- 調査を行い、調査報告書の作成
- 所見書の作成
- 意見書の作成
- 鑑定書の作成
- 裁判への出廷
- テレビ出演での解説
が実際の主な仕事の内容となります。
鑑定書の依頼主としては、裁判所や弁護士、事故の当事者または遺族から直接ご依頼いただくこともあります。
交通事故鑑定人に鑑定依頼がくる場合、事故の当事者同士で揉めに揉めうえに裁判となり、裁判所や弁護士が鑑定人に依頼するケースが大半です。
全国的にも交通事故鑑定人として活動している人は、前述の通り公的資格ではないので正確な人数は分かりませんが非常に少ないです。
裁判において鑑定書を出している交通事故鑑定人は「良く見る名前」が多いのは事実です。
こんな鑑定人には絶対頼むな!
私の経験上、こんな鑑定人には絶対頼まない方が良いパターンをご紹介しますね。
警察OBや警察からの委託鑑定を請け負っている鑑定人
この理由は私も裁判で争ったことがありますが、まずこのような人達は「警察は正しい」という固定観念に基づいて動いています。
というのは、人身事故が起こると「実況見分調書」が警察によって作成されるのはご存知の方も多いでしょう。
実は、この実況見分調書は「事故の原因を書いたものではない」のを知っていますか?
実況見分調書とは
(物損事故の場合は作成されません。人身事故の場合に作成されます。)
犯罪捜査規範には
第 104 条 (実況見分)
犯罪の現場その他の場所、身体又は物について事実発見のため必要があるときは、実況見分を行わなければならない。
2 実況見分は、居住者、管理者その他関係者の立会を得て行い、その結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。
3 実況見分調書には、できる限り、図面及び写真を添付しなければならない。
4 前三項の規定により、実況見分調書を作成するに当たつては、写真をはり付けた部分にその説明を付記するなど、分かりやすい実況見分調書となるよう工夫しなければならない。
第 105 条 (実況見分調書記載上の注意)
実況見分調書は、客観的に記載するように努め、被疑者、被害者その他の関係者に対し説明を求めた場合においても、その指示説明の範囲をこえて記載することのないように注意しなければならない。
引用:国家公安委員会規則-犯罪捜査規範
とあります。
簡単にいうと、「必要な場合に現場を見て、話を聞いて、その時の状況を見分けて調書を作ってね」と言うことです。
- いつ
- どこで
- 何が
- どうなった
- 現場の地図です
- 現場の写真です
- Aさんはこう言っています
- Bさんはこう言っています
これを分かりやすく書くだけです。
原因を追及しなさいと言っている訳ではありません。
したがってAさんとBさんの供述が違って当たり前なんです。
しかしながら、実際には交通事故の実況見分調書は、担当した警察官の主観で描いたストーリーで調書が作られます。
例えばこういう事です…
警察:「スピードは何キロくらい出ていました?」
Aさん:「40キロくらいだと思います…」
警察:「そんなことないでしょ!60キロは出ていたはずだよ!そうでしょ!」
となり、調書には『Aは時速60kmで走行し…』と書かかれる訳ですよ。
担当警察官の描いたストーリーに沿うように事実が捻じ曲げられて行きます。
実況見分調書の闇
前述の通り、担当警察官のストーリーで作られる調書は、辻褄が合わない内容になっていたりするのは当然です。
警察官の仕事は交通事故の処理だけではないですし、特別なライティングスキルもないでしょうから。
しかし、明らかにおかしい調書の内容でも、警察は「ごめんなさい、間違ってました」とは絶対に言いません。
”科捜研”まで総出で訳のわからないこじつけで警察の威厳を保ちます。
「警察に間違いはない」に水戸黄門の印籠の様に”科捜研”という装飾を付ける訳です。
多くの実況見分調書は、明らかに加害者と被害者が決められた内容になっています。
もっと問題なのは、このいい加減な実況見分調書が裁判において重要な証拠として扱われることです。
つまり、このいい加減な調書をもとに判決が下されると言うことになります。
「Aさんはこう言っている、Bさんはこう言っている、さてどっちだろ??」ってのが裁判ですよね?
しかし、裁判が始まる時には既に「こんな事故がありました。Aさんが悪いです。」となっている訳です。
なので、揉める訳です。そりゃそうですよね?
当事者のAさんとBさんがご存命であれば、裁判の場で争うことができますが、もし当事者のどちらかが亡くなっていた場合を想像してみてください。
そういう事です。日本は加害者天国だと言われる訳です。
そんな実況見分調書なんか信じれますか?
警察OBや警察の委託鑑定請負人は、実況見分調書を疑いません。
アヤフヤで間違っているものを前提にしている鑑定は真実とは言えません。
ここを理解できない人はダメです。絶対!
忙しくない鑑定人
実際、交通事故鑑定人は忙しいです。
私がやっている時でも、チームで常に5案件は同時進行していました。
その間にも鑑定依頼が来て順番待ちも10案件以上はありました。
酷い鑑定人は「実況見分調書と現場の写真を送ってください」と言い、数日後に鑑定書が郵送で届いたというあり得ないケースも聞いた事があります。
良い鑑定人は現場に足を運び、残されたモノを見ます。
暇ではないのです。
依頼者に忖度しない
これは例え依頼者が不利になるような事柄もしっかり鑑定書に書けるかどうかです。
鑑定を依頼する場合、依頼者は「自分は被害者」だと思っているで、自分の主張を鑑定書に盛り込んで欲しいと思っています。気持ちは分かりますが、ダメです。
しかし、「鑑定書」とはそういうものではありません。
物的証拠や物理の法則によって導き出された真実を書くものですから。
鑑定人は弁護人ではなく、第三者的立場を決して崩してはいけないのです。
まとめ
良い鑑定人は書類や供述より「モノ」を重視します。
「モノ」というのは、事故当時の車や遺留品のことです。
例えば、鑑定依頼をする際に『「モノ」があるかどうか?』を真っ先に聞いてくる鑑定人であれば信用できる鑑定人だと言えます。
例えば、2台の車が衝突した場合、必ずその2台の車が衝突した痕跡が双方に残ります。
それは凹と凸の様に、完全に一致するはずですよね?
それらを探すところから鑑定が始まります。
モノを見る鑑定人は観察眼も鍛えられているので、何がどの角度でと分かり様になります。
中には机上だけで鑑定書を作成する鑑定人もいます。
本当の鑑定とは、動かぬ証拠から事故の真実を探る作業です。
現場に残された一つ一つの痕跡を”点”とするならば、それらを集めて”線”にする仕事なのです。
時には、御遺体の写真を見ることもあります。
損傷した御遺体の痕跡から、事実を探ります。
そこには亡くなられた方の無念や届かぬ声があるからです。
その声を鑑定人は鑑定書に一言一言に魂を込めて書きます。
それを届けてあげられる大事な仕事なのですから。
最後に・・・私は警察が嫌いな訳ではありません。
ただ、日本の交通事故裁判の内情や闇の部分を知っていて欲しいと思うのです。
あと最後に一つ、事故のニュースで「…警察は事故の原因を詳しく調べています」と言いますが、これは間違っています!
なぜなら原因を調べるのは警察の仕事ではないですからね。
警察が調べるのは「状況」です。
誰かのお役に立てれば・・・”くるまる”でした。 bye!